創元社の、「知の再発見双書」シリーズです。
このシリーズは「絵で読む世界文化史」っていうキャッチコピーの通り、
図版が非常に豊富でとても綺麗で見ていて楽しいです。
150ページ程のコンパクトさも好きです。
150ページ程度で図版が豊富なわけですから、文章も少なく読み易いです。
ジプシー。自らをロマと呼び、ロマニー語を話す流浪の民族。
彼らほど、歴史の表舞台には登場しないながら、
現代のヨーロッパ文化に影響を与えている民族はいないでしょう。
世界史の教科書ではほとんど触れられないので、
日本人のジプシーに対する理解は異常に低いですが、
ヨーロッパの文化を理解するためには、
背景にあるジプシーを理解することが絶対必要だと思います。
フラメンコ、チャルダッシュを初めとした各国の代表となるような民族音楽・舞踊も、
また、いかにも純ヨーロッパ的なワルツなどでさえジプシーの影響を受けています。
また、18世紀後半から20世紀初頭までの芸術においても、
オリエント風の絵画では多くのヨーロッパの画家は身近なジプシーをモデルとしましたし、
国民音楽隆盛期のハンガリーのリストやロシアの作曲家達は、
自国独自の音楽をジプシーの音楽のメロディーに見いだしています。
また、21世紀の問題としても、
現在でもヨーロッパには500万とも1000万とも言われるジプシーがいるわけで、
流浪の民である彼らは、行政上の管理が難しく、
いわば難民のような扱いになっている人達も多く、
それが結果的にスリなどの犯罪をする人達が多いのも事実で、
目を離すことのできないものだと思います。
ジプシーの理解への第一歩に、この本は非常に手軽な1冊でお奨めです!
内容は、大きくジプシーの歴史を書いた本編と、
ジプシーの文化・生活を書いた資料編の2部構成、といった感じです。
タイトルにある、「謎」っていうほど謎が解き明かされたものではありません。
寧ろ、読むといかにジプシーがいろいろな面で多様で複雑であるかが分かります。
下記に、目次を記しておきます。
でも、とにかく図版が多くて綺麗なので、まずはパラパラと図版を楽しんでみて下さい!
過去にジプシー音楽のお奨めCDも紹介しているので、そちらもどうぞ。
⇒ジプシー音楽のCD「神技のジプシーバイオリン」の記事
⇒ヨハン・シュトラウス2世「こうもり」の記事
⇒ヨハン・シュトラウス2世「ジプシー男爵」の記事
⇒ノルン3姉妹のお気に入りブログ.Neo 目次Topへ戻る
- アンリエット アセオ, Henriette Ass´eo, 遠藤 ゆかり, 芝 健介
- ジプシーの謎
第1章 ヨーロッパへの定着
第2章 拡散する「ジプシー共同体」
第3章 定住化政策の失敗
第4章 流浪の再開
第5章 ジプシーとヨーロッパのナショナリズム
資料篇 謎の民族とその文化
1 知識人たち、言語、起源
2 家族の文化
3 はみだした社会
4 伝説と信仰
5 音楽について
6 ナチズムの犠牲者
7 現在のジプシー問題
上記の本は、文章が少ないので、よりジプシーについて理解を深めたい方には、
水谷 驍さんの著作が良いのではないかと思います。
- 水谷 驍
- ジプシー 歴史・社会・文化
- イアン ハンコック, Ian Hancock, 水谷 驍
- ジプシー差別の歴史と構造―パーリア・シンドローム
- デーヴィッド・クローウェ, 水谷 驍
- ジプシーの歴史 東欧・ロシアのロマ民族
ヴィジュアルに分かる本棚を作りました!
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